浜松の教員が中学生の部活を支援。
NPO浜松中学野球育成・強化プロジェクト&ジョイントプラクティスバレーボール教室
野球人口の減少と、運動部活動の効率化を推進するスポーツ庁のガイドラインを受け、練習不足が危惧される中学軟式野球部の選手たち、さらには指導にあたる教員の野球への熱意を消すまいと、この7月に発足されたのが『NPO法人浜松中学野球育成・強化プロジェクト』だ。これは浜松市内の中学校野球部員を対象とした野球教室で、市内中学校の有志の教員が、ライフワークを含めて指導にあたる。
理事長を務めるのは入野中学校の藤田裕光校長。「これはあくまでも部活動のサポート。もっと野球をやりたいという選手、教えたいという指導者に、やりがいを発揮する場を提供したいと考えた。部活動の良さはそれほどお金が掛からず、技術はもちろんのこと、身体づくり、精神面の強化、礼儀の習得などを発達年齢に合わせて教職員が指導するところにある。浜松の場合は、硬式クラブチームも盛んだが、いろいろな環境、さまざまな選択肢があったほうが、子どもたちにとって有益のはず」
主な活動は、浜松市内の中学校の野球部員を対象とした野球教室。この教室はふたつのコースに分かれており、ひとつは部活を引退した中学3年生を対象にしたコース。ここでは高校の部活動を想定して硬式球で練習を行う。目的は「硬式球に慣れること」。硬式球を使ってのキャッチボールやバッティングのほか、ノック練習では全員が内外野ともに行うなど、スムーズに高校野球に移行できるように、さらには子供たちの可能性が広がるように指導されている。活動日は火曜日の午後6時30分から。もうひとつは中学1年生、2年生を対象とした現役選手コース。ここでは部活と同じ軟式球を使い練習。土・日のいずれかが休みとなる部活動に対応したもので、練習不足を補うために行われるものとなる。
副理事長の橋爪敦志先生(北部中)は、「さまざまな野球部顧問が集まることで指導の幅も大きく広がる。それをそれぞれがチームに持ち帰ることでチームの子供たちにも還元できると考えます。このNPOで先生たちにお願いしているのは、ティーチングではなくコーチングをしてほしいということ。専門的な技術を教えることを軸にしてもらいたいと考えています」と話す。取材に訪れたこの日も、10名以上の先生方が子供たちに細かく指導する姿がうかがえた。登録選手数は現役生も合わせると200名以上。中学野球部の活性化に繋がることが期待される。
そしてもうひとつ。同様の目的で立ち上がったのが、中学校のバレーボール部員を引退した中学3年生を対象とした『ジョイントプラクティスバレーボール教室』だ。学校の枠を取り払い、定期的に合同練習を行うのがジョイントプラクティスの定義で、中学と高校を繋ぐ役割も担う。中学バレーボール部の顧問を務める有志の教員で結成された。中心となるのは、蜆塚中学校の袴田敦士先生。「中学では大なり小なりの大会が多いため、ちゃんと基礎練習ができている学校は少ない。中学生の時点では体格に差があることが多く、体の大きな子が力任せに打てば決まってしまう。ただ高校に行けばそうはいかない。体格差がなくなったのに力任せに打っても決まらないし、怪我のリスクが大きく増す。高校までの半年間にしっかりと基礎・基本を理解して、考えてプレーする習慣を身に付けてほしい」
練習では、レシーブ時のつま先の向き、それにともなう膝の向き・曲げ方から、スパイク時の腕の使い方、足の向き、サーブ時の変化球、落ちる球の打ち分け方など、細部に渡って技術指導が行われるほか、物事の考え方、怪我をしないための体の使い方、さらにはアップ、ダウンの仕方までをレクチャーしてくれる。この教室に通う中学生のほとんどは、全てが初めて聞くことばかり。目を輝かせ、真っ直ぐ先生の指導に聞き入る姿が印象的だった。
それぞれ参加費が掛かるが、それらは会場代や用具代などに充てられる。
部活動の効率化については、依然、賛否両論ある。ただ、もっとやりたい子どもがいて、もっと教えたい教員がいるのであれば、「ぜひやっていただきたい」というのが個人的な考えだ。スポーツは子どもが成長する場であるとともに、自ら考え、行動する“自律”を促す場でもある。「地域クラブでいいじゃないか」という声も聞こえるが、このふたつの組織は、指導にあたるのが学校の教員。指導者である前に教育者である面々だ。技術の向上だけではない、人間としての成長に期待したくなる組織でもある。
それぞれに対する問い合わせは下記バナーから。
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