野球を始めたあの日からのこの日までの成長を、しかと見届けてほしい。そしてそれは、親だけが持つ特権でもある。

編集長のひとりごと

入稿日ギリギリまで取材したが、今年も何とか【静岡県西部地区高校野球部3年生名鑑】を発行できる運びとなった。取材に協力いただいた学校関係者の方々、さらには発行に対する協賛をいただいた企業の方々に厚く御礼申し上げたい。

今年度はさまざまな変更や改革の初年度となる年だった。まずはバットの規格変更。これについては現場の選手や指導者しかわからない話だと思うので、具体的にどうなったのかは割愛したい。さらにもうひとつ。静岡県では秋季大会、春季大会のレギュレーションが変わった。西部、中部、東部とキッチリ分かれていた予選を、地域格差を減らすことを目的に、チーム数に応じて調整が行われた。西部地区から県大会に出場する枠は増えたものの、敗者復活戦は決定戦のみとなり、実戦経験を得られる場は減少した。この先も試行錯誤を繰り返しながら、さまざまな場面で変化、および改革が施されることが予想される。

そんな変革期に行われる夏季大会。ここでの変化はシード校の倍増。これまでの8校から16校に増えた。シード校は比較的近い会場となる可能性が高く、応援している人達も会場に足を運びやすくなり、観客が増えるかもしれない。ちなみに、試合日程の不公平をなくすことを目的に、開会式直後の開幕戦も廃止。いずれの変更も、選手を想ってのことなのだろう。

さて、今年もさまざまな選手から夏に向けての目標を聞いた。「甲子園出場です」という選手もいれば、「初戦突破が目標」という選手や、「マネージャーが3人いるので、全員がベンチ入りできる分だけ勝ちたい」という選手がいるなど、当然のことながら、目標は選手、チームによって異なる。選手には全力で戦い、兎にも角にも「やりきった!」という想いを抱えて、高校野球を終えてもらいたい。

一方で親御さん。これまではチーム事情について「あーだ、こーだ」と言っていた方々もいるだろうが、最後は全く別の見方で子供たちを見てほしい。残酷だが、全国で1校以外は全て負けて終える。静岡県においても1校以外は負けて終える。負ければ終わり。小学校の時から10年にも及ぶ彼らの本気の野球は、一回負けたら終わる。高校後も本気の野球を続ける割合は一割強。ほぼ全ての子は、この夏で本気の野球が終わるのだ。彼らはこの10年間で、他の子たちが得られない何かを得た。間違いない。親御さんにとって、その何かに気付く夏大であってほしい。次などない。この大会で、この試合で気付かなければ、たぶん、二度と気付かない。それはお子さんがどこにいようが関係ない。グラウンドだろうが、ベンチだろうが、スタンドだろうが、全く関係ない。高校最後の数週間の居場所だけで、彼らの10年間が無駄になるわけがない。野球を始めたあの日からのこの日までの成長を、しかと見届けてほしい。そしてそれは、親だけが持つ特権でもある。

最後の夏は親御さんにとっても集大成。子供に尊敬される親として、チームメイトみんなを見届けてほしい。



 

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