緊急対談/
 子供の幸せについて考える。

はなきりん

---早速ですが、いろいろお話をお伺いしていきたいと思います。大田さんは、学びの場「はなきりん」の代表を務められています。立ち上げられたきっかけは?

(大田) 前職で、住宅という暮らすスペースを通して7万組以上の消費者の無料相談対応をする中で、日本人は自分で立つことの必要性を忘れている、と知ったことがきっかけです。
ちょっとした考え方の学びがあれば、人が悩んだり、迷ったり、不安や問題を抱えたりしなくても済むんです。この学びは、たくさんあるわけではなく、難しいことでもありません。それを伝えたいと思い、この団体を立ち上げました。

---材木卸の会社を経営されている鈴木さんですが、どういったきっかけで、「遠州バザール」を開催されるようになったのですか?

(鈴木) 2011年の東日本大震災でした。被災された方々を見ていて、自分だけとか、自分たちだけが良ければいいと言う考えではいけないと気付かされたことがきっかけです。
みんなと繋がる場所、みんなが自立しながら自分の夢を叶え、地域みんなで発展していく。その一翼を担えたらと思い、遠州バザールを始めました。

---なるほど。ジュニアアスリートは「地域再生」をキーワードに創刊しました。地域の大人が、地域の子供を見守り育み、子供は、自らが目標を持ち、その目標に向かって歩んでいく。そしていずれ、地域に戻り、子供を見守る大人になる。そんな循環社会ができればと思っています。お二人のきっかけの中に“自立”というキーワードが出てきています。まさに、子供の自立を促すことが、親の大事な役割のひとつだと考えています。お二人が思う自立とはなんでしょう?

(大田) 自分の意思で立つことです。誰かに言われたからとか、周囲がどうだからということではなく、自分で考え、選択し、決断して、自分の意思で、自分の責任の上で行動するということだと思います。

(鈴木) 手を繋いでみよう、ということでしょうか。東日本大震災の時に気付いたのは、繋がることの大切さ。家族を含めた人と人、地元地域との繋がりが、ある種の自立だと思います。大手企業に依存するのではなく、地域で繋がる。手を繋ごうとする勇気が自立することと言えるかもしれません。

(大田) 確かに、自立にはいくつもの種類がありますね。精神的自立、経済的自立、体力的自立、社会的自立など、さまざまなものがあります。それを分かりやすく提供するのが、はなきりんです。はなきりんの理念は、自立的に将来を実現していくための学びの場の提供ですから。

(鈴木) 私は建築業界に身を置いていますので、住宅を買われるタイミングとかも気になっていて、「えいやっ」と購入される方が多いような気がしています。なぜ今必要なのかを熟考して、将来計画を見据えたうえでご決断していただければ幸いです。将来計画を立てることも自立のひとつかと思います。

(大田) 将来計画を立てることは、家族の経済的自立と言えるかもしれませんね。お金の話というのは学校では教えてくれません。「学生の間にいくら掛かるのか」、「死ぬまでにいくら必要なのか」などは、親が子供に教えるべきものだと思うんです。将来の夢を子供に聞くと、「大きな会社に入りたい」という子がたくさんいます。でも、ほとんどの子が、大きい会社のことを知らない。「新聞のココに載っている会社が上場企業といって、大きな会社なんだよ」くらいは親が教えないといけないですよね。物事を知らなければ、自立はできませんから。

(鈴木) 子を持つ親としては耳が痛いですね(笑)。私たちは、子供の自立には親子の良好な関係が必要だと考えています。遠州バザールでは、親子の会話が増えたり、愛情を感じたりできる企画を用意しています。家族への愛情と感謝、自分への自尊心を育んだ子供たちの活躍の場を、地元に作っていきたいです。

---考えてみると、昔の人は親が生きるための術を教えていたように思います。それが今や何でもかんでも「学校で教えろ」みたいな。それがモンスターペアレントなどに繋がっているのかもしれませんね。

(大田) 例えば、誰かが何かをしてくれないから。こんなツライ思いをするのは誰かのせい。自分の思い通りにならないのは、自分以外の誰かや状況、環境の責任にする。そんな親の姿を子供は見ています。もし、全ての責任を自分の責任として受け入れることができたなら、ストレスよりも、どうすべきかを考えるのが人だと思います。石につまづいて転んで怪我をした時、「石がそこにあるから転んで痛い思いをした」と考えるのと、「石を見ていなかった自分がいたから転んだ」と思うのも同じことです。前者の考え方ならどうしようもありません。後者なら、「自分の歩く道をちゃんと見て歩くようにしよう」と改善策が浮かぶものです。これが自立です。この考えは、少しでも小さい時から身に付けた方がいいですね。それだけストレスのない人生を長く生きることができるのですから。日本の将来は、経済的にも、将来的にも厳しいと想像できます。未来を担う子供たちには、より早く生き抜く力、自立を身に付けてほしいと思っています。それを教えるのは我々大人の役割。純粋な心で様々ものを吸収する子供たちに、社会に出て役立つ、生きる力を伝えていきたいですね。

---そのためにも、我々大人が見本になり、生きることの素晴らしさ、自分の足で立つことの必要性を、子供たちに見せる必要があるようにも感じますが。

(鈴木) 一生懸命勉強して、大手企業に入るのもひとつの選択肢。ただ、ここには魅力的な中小企業がたくさんあります。そこでやりがいを見出し、自分を活かしながら仕事に取り組むというのも、ひとつの選択肢だと思います。大事なことは、どんな自分になりたいか。そのための自立だと思います。遠州バザールの開催意義のひとつに、地域の企業を知ってもらう、というものがあります。魅力的な商材を見て、触れてもらうことで、何かに気付いてもらいたいと思っています。そのために、建築業界に限らず、衣・食・住、様々な企業の皆さんに出店しもらっています。その中から、何かを見つけてもらい、それが憧れに繋がってくれたら一番です。

---子供たちには可能性しかない。本気になれば何にだってなれる。自分で将来の目標を持ち、そこに向かっていくことこそ素晴らしい。しかしながら、そこには正しい選択肢が存在していないことが多い。自分が見つけた「ちっぽけな世界」を全てだと思い込んでいるのがそれだ。子供に対し、正しい学びの場を提供すること、正しい選択肢を与えること。学校では教えてくれない、親しか教えられないことを教えることこそが親の役割。それこそが、子供が幸せになる唯一の道に思えてならない。

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