[第18話] “イチ”から出直せ

空飛ぶ野球少年

11月28日。

この日は新人戦の初戦「引佐ドリームジュニア」との対戦。
“コウタ世代”になってはじめての公式戦だ。

コウタは何日も前からこの日をとても楽しみにしていた。
この日に向けて毎日練習もがんばっていた。

しかし気になることがあった。

「2回戦は細江だって。今度は絶対勝ちたい!」

とコウタが言っていた言葉だ。

「初戦は引佐でしょ?細江のことは引佐に勝ってからじゃない?」

コウタに聞くと

「引佐には勝てるよ!だって練習試合で勝ったから!」

1回勝ったからってまた勝てるとは限らない。そもそも勝ったのは練習試合だ。公式戦とは全くの別物。
自分の経験上、こういう気持ちで試合に挑んでいい結果が出ることはない。

“一戦必勝!”

大事なことが欠けているような気がしていた。

 

AM9:00

プレイボール!

フレンズの攻撃から試合がはじまった。

(この時からいつもと違う雰囲気。緊張しすぎているのか、それとも気負っているのか…)

引佐の先発ピッチャーは右の本格派で、投球フォームが実にしなやか。コントロールも良さそうで、フォアボールはあまり期待できそうもない。

序盤は両チームともピッチャーが好投し、得点が入るどころかランナーすら出せない。

この日は「5番ファースト」のコウタ。チームの雰囲気がおかしいのに気が付いたのか、懸命にみんなに声を掛けるが、コウタ自身も試合に入り込めていない…

試合は突然動いた。

ツーアウトながらランナーを3塁に進めた引佐。
次のバッターの打球は“ぼてぼて”の内野ゴロ。
「捕ってファースト、チェンジ」のはずが、捕ってバックホーム…

痛恨のフィルダースチョイス!

引佐が先制した。

これは個人的なミスではなくチームのミス。
みんなで声を出して、ゴロを捕ったらどうするかをしっかり確認していれば防げた失点。

「どうせ自分の所にはこないだろう」と思って守っているからこういうミスが生まれる。
気持ちが試合に入っていれば、各々がもっと声を掛け合っていたはずだ。
チーム全体が集中していない。

このミスにより好投していたエースのサトシの集中も切れた。

当然流れは一気に引佐に傾く。
このミスに乗じて得点を重ねていく。

結果は0-6の完封負け。しかもヒットは1本のみ。完全なる負け。
目の前の試合に集中できなかった代償は“1回戦敗退”。
全くいい所がなかった。

目一杯やって負けるのなら得るものもあるのだろうが、この日の負け方からは何も得られない。

“イチからの出直し”

常に相手に敬意を払い、最大限で取り組むことができないのであればスポーツをする資格はない。

本人たちはこの敗戦をどう感じて、どう思っているのだろうか…

>>>空飛ぶ野球少年第1話からはこちら

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