文化に触れる行事
聖隷クリストファー中・高等学校
本校には、1年を通じて様々な行事・活動があります。今回は、本校の行事・活動の中から、1月に行われる中学全校での百人一首大会と、1年生の楽器博物館研修についてご紹介します。
毎年1月、中学生徒会行事として「百人一首大会」が行われます。各クラスを3つの大グループに分け、総当たり戦を行います。その後、トーナメント戦にて1位から最下位までの順位を決定していきます。その後は、大グループをさらに3つに分けて「源平合戦」方式で競います。
源平合戦とは、①札は自陣、相手陣ともに50枚ずつを、床の上に自分たちの方向に向けて3段に並べる。②自陣の札を取った場合はそのまま。相手陣の取り札を取った場合は自陣の取り札を1枚、相手陣に並べる。その際の札の受け渡しは、渡す側が札を選び、相手陣に送る。③50首詠み終えた際、自陣にある取り札の少ない方が勝ちとする。というものです。読み手が上の句を詠み、そして下の句を詠むのを聞いて生徒達は札を取ります。
中学生全員が床に並べられた札に向かう姿は壮観です。「人気の一首」がいくつかあり、その句の最初の言葉が詠まれると、特に激しく札を取り合う姿が見られます。本校にはカルタ部があり、日々競技カルタに親しんでいる部員たちは流石の強さを毎年この百人一首大会で見せてくれます。が、カルタ部員だけでなく、今年度初めて百人一首に触れた1年生も上級生に交じり、よく健闘しました。
百人一首は、藤原定家が奈良・平安・鎌倉時代の優れた歌人100人の歌から一首ずつ選んだもので、春夏秋冬の四季の眺め、恋することの切なさ・美しさ、人の世のあわれが描かれています。百人一首大会は、日本の美しい文化、そして日本語の美しさと面白さに楽しみながら触れることのできる有意義な行事です。大会後は、「来年までにもっと覚えてもっと札を取りたい!」「来年は3年生で最後だから優勝したい!」といった言葉もそこかしこで聞こえ、生徒達のさらなるモチベーションにもつながっているようでした。
1月には、もう一つ、文化に触れる行事があります。それは、毎年中学1年生が参加する楽器博物館研修です。浜松駅近くにある楽器博物館にて、1日特別授業を受けるプログラムです。楽器博物館研修は、音楽の特別授業であると同時に、海外の文化にも触れる国際理解授業としても位置付けられています。そのため、音楽の授業での事前・事後指導だけにとどまらず、浜松インドネシア友好協会の木下副会長にお願いして、12月にインドネシアの生活・文化・楽器に触れる事前学習の機会も設けています。
インドネシアについて特に事前授業をしているのは、研修当日に、インドネシアの楽器、ガムラン演奏を体験させていただいていることも理由の一つです。みなさんは、ガムラン演奏をお聴きになったことがあるでしょうか。ガムランは、私達が日常で目にしたり耳にしたりする音楽ではありません。ガムランとは、大きさ様々な銅鑼(どら)や太鼓、鍵盤打楽器(鉄琴のようなもの)10種以上による合奏の民族音楽の総称です。浜松市楽器博物館入り口を入って左手に一段高くなったところに並んでいるのが、ガムラン演奏に使う楽器です。ガムランに使われる楽器はそれぞれに神様が宿っており、奏でられる演奏も神聖なものとされています。生徒達は、それぞれ興味のある楽器を選び、演奏に挑戦しました。午前中と午後のグループに分かれての演奏でした。両グループとも同じ曲を選択したのですが、音階を変えての演奏だったため、仕上がった音楽は全くことなる響きをもつものとなりました。限られた時間の中での挑戦でしたが、両グループとも大成功でした。
ガムラン演奏の他には、鍵盤楽器の歴史についてのレクチャーを受け、小グループに分かれて、ワークシートをもとに館内を見学させていただきました。教科書に出てくる「馬頭琴」や、「骨でできている楽器」というものもあり、生徒達も楽しみながら見学をしていました。
百人一首大会、楽器博物館研修ともに、日本の文化や世界各国の文化に触れ、またさらなる興味を呼び起こす体験型の学習です。中学・高校の多感な時期、生徒達には多くの新しい体験をしたり、「当たり前」と思っていることについて改めて考えたりする機会を多く持ってほしいと考えています。古くからの伝統や文化を知り、また興味を持つことが、「新しいもの」を生み出すきっかけとなることもあるでしょう。学びは、学校の中だけのものではありません。生活のそこかしこにも学びの種があり、ちょっとした刺激でその学びの種が芽生え、大きく育つのです。生徒一人ひとりの興味を大切に、個々の中で学びの種が大木となるような活動を、今後も充実させていきます。