熱中経験の有無が
 人生を左右する。

編集長のひとりごと

春は別れと出会いの季節。

私事だが、息子が高校を卒業した。何だか「あっ」という間だった。
ジュニアアスリートを創刊したのは、彼の中学の部活動が終わって間もなく。それからもう3年が経過した。ジュニアアスリートは4年目を迎え、彼は大学生になる。

この3年間、さまざまなことが大きく変化した。

創刊当初は取材先の確保に四苦八苦していたのだが、最近では多くの取材依頼を受けるようになり、大会取材に行っても、多くの方々に喜んでいただけるようになった。ジュニアアスリートを通して、多くの方と出会うことができた。
2年ほど前、雑誌の消化が急激に速くなり、皆さまの手元に届きにくくなったことからホームページを始めたのだが、最近では、月間アクセス数が頻繁に200万PVを超える“県内ナンバーワン”のホームページとなった。
地元企業からのバックアップも、少しずつではあるが、増え始めている。「地域の日常に溶け込めてきたかな」と実感することが多くなっていた。

私生活では、夏に息子の野球が終わったことで、約10年間もの間、足繁く通ったグランドから離れることになった。当初は過去を懐かしむ日々が続いたが、いつしかその状態にも慣れ、日常を取り戻していた。

この週末、息子からキャッチボールに誘われた。少し驚いたが、快く受けた。小学5年生の時に交通事故に遭ってから、「今日が最後かもしれない」という想いでキャッチボールをしてきたのだが、この時ばかりは「本当の最後だな」と思い、自宅裏の広場へ出掛けた。
半年以上ぶりにやるキャッチボール。ワクワクしながらボールを受けたけたのだが、少し「ガッカリ」した。これまでというもの、やる度にボールは速くなり、変化球はどんどん曲がっていった。日に日にレベルアップする彼のボールを受けるのが一番の喜びであり、楽しみだった。
それがこの日、球速は劇的に落ちていた。よくよく見れば、20mほど向こうから投げる彼のシルエットは大きく痩せこけ、盛り上がって見えた大胸筋は、もはや見る影もなくなっていた。

元々ガリガリだった彼は、部活が終わり帰宅すると、黙々と筋トレを繰り返し、無理をしながら大量のご飯を食べ続けた。3年生になると、大胸筋が大きくなり、“細マッチョ”の体を手に入れた。
野球に対する情熱が、ツラい自主練に向かわせ、体型変化という形になって表れた。

これもひとつ努力の証だ。

部活を引退すると、すぐさま受験勉強に取り組んだ。
「○○大学に行きたい」と目標を立てたものの、それは果てしなく遠い道程。夏の模試ではE判定すら付かなかった。その後もブレることなく、自習室や図書館などで努力を重ねた。秋口にはC判定に、年明けにはA判定になっていた。

部活で学んだ努力の過程を、受験勉強という全く違うジャンルでも活かすことができた。

「ブラック部活」と呼ばれ、「勉強の邪魔になる」と活動制限される運動部活動。
勉強の仕方も大きく変わるというが、やり方がいかに変わろうが、大事なのは本人のやる気。自らが目標を立て、本気で挑めるかどうか。要するに“熱中経験の有無”がその子の人生を大きく左右するように思えてならない。

果たしてどれだけの子が授業で熱中できるのだろう。
部活でしか経験できないことがあるように思えてならない。

目標を達成した彼とは、間もなくお別れ。新たな目標を見つける旅に出る。

アローズ




関連記事