忘れたくない
 子供への感謝の気持ち。

編集長のひとりごと

今年も“この時期”がやってきた。

現在、前哨戦となる大会が行われている競技もあるが、中学三年生にとっては、“最後”の『中体連夏季大会』を残すのみとなった。「ついこの間、入部したばかり」だと思っていたのに、あっという間に“終わる”。

昨年に引き続き、今年も「列強列伝」なる企画を掲載した。
本来、列強とは、強い力を持つ国々を指すが、ここでは、強い部活動という意味で、聞き慣れた“列強”という言葉を使わせてもらっている。内容としては、夏季大会の注目チームとして、新人戦で好成績を挙げた部活をクローズアップ。夏季大会を見るうえで、多少の指針になってもらえれば有り難い。

さて、最後となる大会が目前に迫っているとはいえ、まだ二ヶ月近くある。
プロ野球でいえば、キャンプインしたばかりの状態。やれることはまだまだありそうだ。チーム戦術をさらに研ぎ澄ますこともできるだろうし、コンセプトを再確認、徹底させることもできるだろう。もちろん、新戦力が台頭してくるかもしれない。
まさに、指導者の皆さんの“腕の見せ所”といったところか。

三年生にとっては、これからが本当の正念場。
「もう、レギュラーは決まっているから」と諦めるのか、それとも、「レギュラーを奪ってやる」という気持ちで取り組むのか。結果がどうなるかは別にして、この両者には大きな隔たりがある。

大事なことは、“やりきれた”かどうか。

評価を下すのはあくまで他人。
そんなことに左右されてはいけない。今こそ、自分が自分を評価するとき。「悔いなくやりきった」。そう思って、夏を迎えて欲しい。背番号が決まるその日まで、チャレンジし続けて欲しい。
その後で、自分が置かれた役割を全力で取り組めばいい。

だが、よくよく考えてみれば、燃え尽きて終わることができる子はまだいい。
多くの子は、燃え尽きることもできないまま、部活を終える。その理由は、他人の評価によって、ある種の自己否定をしてしまうからだと思う。これにより、全力で取り組むことがバカらしく思えてしまう。モチベーションの維持が難しくなる。

これは部活に限ったことではない。

大人になっても、評価は全て他人が下す。
ただ、忘れてはならないのは、全ての成功の鍵は“自分自身の中にある”ということ。自分の不遇を他人のせいにしても何も始まらない。全ては自分。目標を持ち、とにかく“やる”。
自分だけは、自分自身をしっかりと評価し、信じてあげてほしい。

そして、子供と一緒に、親も“終わる”。

週末になると早起きし、お弁当を作っていたお母さん、平日よりも早起きし、子供を送迎したお父さん、そんな生活もまもなく終わる。
思い起こせば、子供がスポーツを始めてから、我が家のライフスタイルは大きく変わった。週末に呑みに行く回数は減り、嫁さんが新しい服を買ってくる回数が減った。週末になると、お揃いのチームシャツを着て、ともにグランドへと向かった。
考えてみれば、いい年してペアルックだ。

子供がスポーツをやっていてくれたからこそ、夫婦の会話が保てた。
「もし、子供がスポーツをやっていなかったら…」。そう考えただけでゾッとする。我が家だけかもしれないが、子供のおかげで、家族が家族でいられたのだ。

忘れたくない、子供への感謝の気持ち。

それさえあれば、震えるほど感動する夏が待っている。
そしてそれは、輝かしい未来へと繋がっている。

全ての中学三年生にエールを。




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