支えてくれた人の 想いを胸に跳ぶ。
平野 海吏
新津中学校陸上部
男子走り高跳びの新星として、この夏日本一に手が届くところまで飛躍を遂げたのが平野海吏くん(新津中学校3年)。6月に行われた『静岡県西部通信陸上競技大会』で1m95cmを跳び、一躍全国ランキングのトップに名を連ねた。先日他県の選手に記録を抜かれ、現在は全国ランキング2位だが、その差は2cm。十分に射程圏内であり、記録を更新して夏の日本一を目指す。
走り高跳びを始めたのは、小学6年の時。部活動で走り高跳びを始めると、浜松市の陸上大会でいきなり2位入賞。中学に入学すると迷うことなく陸上部へ。走り高跳びをやるかと思いきや、始めにやった種目は走り幅跳び。これについて平野くんは、「入学当初は、スピードが足りなくて、それを身につけるために走り幅跳びをやっていました」と話す。遠回りにも思えるが、結果これが功を奏す。1年の秋から本格的に走り高跳びに専念すると、直後の新人戦では1m71cmを跳び大会新記録を樹立。確かな手応えを掴んだ。しかし、その後は記録が伸びず苦しい時期を経験。先生などと話し合いながら自分に合ったフォームを探した。参考にしたのが、小池輝選手(浜松市立高校卒、現静岡陸協)。168cmと小柄ながら2mを軽々と越えていくその姿に自身を重ねた。何度も動画を見てフォームを真似、その姿に追いつけるよう取り組んだ。その成果もあり、2年の夏には1m84cmを跳び、全国大会まであと1cmに迫った。
そして迎えた最後の夏。標準記録を突破し、自身初となる全国大会への切符を掴みとった。
全国大会出場を決め、ひとつの節目を迎えた彼は、今まで支えてくれた人たちへの想いを口にした。
「自分一人では、辿り着くことのできなかった舞台にこの夏、立つことができます。親や先生を始め、多くの人に支えられてきました。特に、昨年まで顧問として指導してくれた的場先生(浜名中)には、自分の基礎となる部分を多く教えてもらい、成長させてもらいました。最後の大会を一緒に迎えられなかったのは、残念ですが、結果で成長した証を示したいです」
そして、彼にとってもう一人特別な存在がいる。それは、これまで切磋琢磨しながら共に競い合ってきたライバルの伊藤碧生くん(丸塚中学校3年)。伊藤くんは、故障を抱え、この夏の全国大会出場を断念。標準記録を何度も越えている選手だっただけにその悔しさは計り知れないと平野くんは話す。「彼がいたから今の自分があるし、彼の存在がなければきっと注目されるような選手にはなっていない。一緒に競える仲間がいて、自分が成長できた思います。なので、彼のためにも全国で結果を出したい」
平野くんの最大の武器は、目標を掲げ、目的地を定めて、しっかりと努力できる意識の高さと、「一度跳べば、いつでも跳べます」と言い切れるメンタルの強さ。学校での練習は週に5日。休日は個人で四ツ池陸上競技場などで練習に励む。同年代のライバルに加え、昨年全国2位に輝いた塚本好陽くん(浜松商業高校1年)など全国トップレベルの選手と共に練習に励み、競い合い、アドバイスをもらい、自分の血肉へと変えてきた。
現在は最終調整として助走から上に跳ね上がる時の動作を固めることに注力し、万全の状態で全国大会に挑む。「この夏の間に、新記録を出して長年抜かれていない県中学記録を塗り替えたい。そうすれば自然と日本一になれると思います。その後は、日本選手権やオリンピックで活躍できる選手になりたい。中学だけで終わる選手ではなく、大人になっても活躍できる選手になりたいと思います」
多くの人の想いを胸に、この夏、日本一へと跳び上がる。