「口にすることで、夢は目標となり、実現のための道標が見えてくる」。子供には夢を持って欲しいし、夢を持ち続ける大人でありたいものである。

編集長のひとりごと

日本中を熱狂の渦に巻き込んだ『WBC2023』は日本代表の優勝で幕を降ろした。大会前の日本の世界ランキングは1位。優勝候補筆頭として挑んだ大会でもあった。「ロースコア競技」に分類される野球は、サッカーと並び、波乱の多いスポーツとして知られる。昨年パ・リーグを制したオリックスバッファローズの勝敗は76勝65敗(2分)。5割4分に満たない勝率でリーグ優勝。それだけ勝ち続けることが難しい競技だと言える。準決勝での奇跡的なサヨナラ勝ち、漫画でも描けないような美しい決勝戦と、リーグ戦となる1次ラウンドから全勝で優勝を果たした。野球の競技性を考えれば「快挙」。改めて、スポーツの美しさ、素晴らしさを実感した大会となった。

選手たちが頻繁に口にしていたのは、「野球の楽しさを子供たちに伝えられれば」という言葉。「野球は親が大変」という風潮が先行し、野球人口は減少の一途。それを憂いての言葉であることは疑いの余地がない。ここで疑うべきは「野球は親が大変」という言葉である。果たして本当に親は大変なのだろうか。大変な理由として真っ先に挙げられるのが「お茶当番」。これを廃止するチームは増えているものの、野球人口の減少は止まらない。果たして本当にこれが理由なのだろうか。

中学では合同チームが増えているが、中学だけではない。その素地であるはずの少年団も団員不足に悩んでいる。それは何故か。思うに、「親が大変だから」ではない。野球界を取り巻く構造改革の遅れが原因ではないだろうか。

何が遅れているのか。それは「チーム選択の自由」がないことである。少年野球は基本的に、学区内のチームに所属することが求められる。そのチームが団員不足で大会に出場できないチームであっても、子供が目指すレベルと合ってなくても、そのチームに所属することが求められる。理由は「選手の取り合いを防ぐため」。野球人口が増加し続けている時代ならともかく、減少が止まらないこの時代に合っているシステムだとは到底思えない。大事なことは「野球をやりたい子供がやりたいチームでプレーできる」こと。ではどうやってそのチームを探すのか。実はそのフレームがない。チーム理念や指導方針、運営方法など、チームを選択する上で必要な情報があるべきだが、ほとんどのチームにそれがない、もしくはあったとしても目に触れる機会はほとんどない。要するに、選びようがないことが目下の問題となる。そしてこれは野球に限った話ではない。チーム内に起こる不平不満。その多くはチームのフレームがないことが原因。子供たちに選んでもらえる競技になるため、親御さんに安心して預けてもらえるチームになるためには、声を挙げて、「ウチはこういうチームです」と言い続ける必要がある。

WBCで大谷翔平がMVPに輝いたことで、再び脚光を浴びた彼の『人生設計ノート』。高校時代に「27才でWBC MVP」と書いた彼は、コロナ禍により多少ズレたものの、それを達成した。我々はこれを他人事として捉えてはいけない。我々大人に対しても、子供たちに対しても、彼は夢を実現する方法を教えてくれたのだ。「口にすることで、夢は目標となり、実現のための道標が見えてくる」。子供には夢を持って欲しいし、夢を持ち続ける大人でありたいものである。

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