令和8年9月から本格的に地域へと展開される磐田市の中学部活動。その中心を担っていく『磐田市地域クラブ活動 SPO☆CAL IWATA』を担当する磐田市教育委員会放課後活動課の岡部さんと太田さん、土屋さんに今後の展開について話を聞いた。

来年秋から変わる中学部活動。

磐田市地域クラブ活動 SPO☆CUL IWATA

これまで、多くの学生たちの学校生活を彩ってきた部活動。仲間と共に目標に向かって打ち込んだ時間は、今でも多くの人の心に刻み込まれているだろう。そんな部活動が、今変わろうとしている。

令和2年から動き始めた部活動の地域展開。令和4年に「令和5年からの3年間で休日から段階的に地域に移行していく」という指針が文部科学省やスポーツ庁から発表された。これに伴い、各市町村で今後の部活動の在り方について議論され、既に動き出した自治体もあれば、まだ方針が固まらず、本格的には変化していない自治体など様々だ。大きな変革を伴うため、容易に決断することは難しいだろう。

そんな中、磐田市では部活動を地域クラブ活動に移行するという方針が決まり、昨年度から『磐田市地域クラブ活動 SPO☆CUL IWATA(スポカル磐田)』が始動。令和8年9月からは休日の活動は学校部活動ではなく、地域クラブとして活動していく。段階的に平日の移行も進め、遅くとも令和13年4月までには、全ての学校部活動が地域クラブ活動へと移行される。

そもそも学校部活動の改革がなぜ必要なのか。一番大きい問題は少子化だ。現状、野球やバレーボールといった競技をはじめ、単独でチーム編成ができない学校が増加している。特に、3年生が引退した秋からの半年間は2学年で活動しなくてはならず、3学年では単独で活動できたチームもこの時期は合同チームでの活動を余儀なくされるケースが散見される。さらに磐田市では令和14年以降は生徒数が減少の一途を辿り、19年には現在から37%減少する見通しとなっている。こうなってくると学校部活動を維持していくこと自体が困難な状況となる。こうした背景を鑑みながら、より良い形で子どもたちが安心して活動できる場としての役割を担っていくのが、『スポカル磐田』となる。

では、具体的にどのように変わるのか。大きく変わる点はふたつ。ひとつ目は、学校部活動の再編。学校単位ではなく、3から4校の学校でひとつのクラブとなり、3つのエリアで活動していくこと。メリットとしては、参加生徒を安定して確保し、持続可能な活動ができることや、チーム数が減ることで指導者も確保しやすく、場合によっては複数人の指導者を配することができるなど、人的確保が担保されやすくなるという点だ。ただ、これまでとは違い、活動するための移動距離が増える場合が多い。近隣の学校同士での再編ではあるが、多少の移動が必要となるだろう。また、1チームの人数が多くなることが予想されるため、学年別など複数チームに分けて活動することも考えられる。そうした時の会場や時間等の工夫も今後の課題となる。

ふたつ目は、学校部活動と地域クラブが融合した形になること。これまでは、学校部活動と地域クラブは、それぞれが別々に活動していたが、『スポカル磐田』に地域クラブが参画することで、生徒たちは様々な選択肢の中から自分に合ったものを選ぶことができる。現在でもボクシングやバドミントン、ダンス、将棋、プログラミングなど、様々なクラブが参画している。参画するクラブには幾つかの要件があるが、今後はもっと増えていくことが予想される。これまでは学校にやりたい競技の部活動がない場合、越境して進学するか、外部のクラブチームでやるという選択肢しかなかったが、『スポカル磐田』になることで、その問題も解決されていく。何よりも、多くの選択肢が用意されるということは、子どもたちの可能性を広げていく中で、この上ない環境ではないだろうか。

学校部活動から地域クラブ活動へ。これからの数年間で大きな変化が生じていく。『スポカル磐田』の活動場所は、主に学校施設を利用し、市内の中学生が対象。参加費用は、休日のみの場合は月額2000円(平日も実施の場合には日数に応じて加算)で、クラブによっては活動費が別途必要となる場合もあるものの、安価な上に、磐田市として取り組むことで、子どもたちにも保護者にも安心感を与えている。また、地域展開により学校管理外での活動となるため、活動中のケガ(移動も含む)に備えてスポーツ安全保険にも加入している。

来年9月以降は大会にも各クラブで出場していき、本格的に地域クラブとしての活動がスタートしていく。協調性や協働性、自主性、目標に向かって努力することの大切さなど、これまでは学校部活動が担ってきた人間形成の場としての側面は残しながら、子どもたちそれぞれが自分に合った居場所を見つけてほしいと思う。磐田市が進める地域クラブ活動『スポカル磐田』。新たな形へと変わっていく部活動のこれからに、今後も注目していきたい。


 

関連記事